和花の呟き(長文注意)

世間話をほとんどリアルでする事のない、アラフィフおひとりさまの心の内や行動を、長ーい文章で綴っています

猿之助さん、そして歌舞伎の事

昨日、市川猿之助さんの裁判が行われました。執行猶予3年、と言う判決が出たようです。

正直言って、未だにスッキリしない事件ではあります。そして、1番残念だったのは、当時舞台を公演中だったにも関わらず、事件に至ってしまった事。衝動的だったとは言え、役者が1番やってはいけない事を犯してしまったのです。

裁判では、事実を認め、事件に至った経緯などをきちんと話した印象でしたが、それでも世間の目はかなり厳しいようですね。まぁ無理もありません。

御本人は、許されるなら歌舞伎の世界に戻りたいと仰ってますが、仮に戻れたとしても、茨の道が待っているのは覚悟しないといけません。

多くの人が仰ってますが、歌舞伎の世界は、割と事件をなあなあにして、シレッと復帰させているイメージがあるようです。まぁ、そのような側面があるのは否定しません。

ただ、猿之助さんの場合、そんなに大きな一門の出ではないのと、後ろ盾であるお父様、伯父様を相次いで失っています。だからすぐの復帰は難しいのでは、と思っています。少なくとも、菊五郎さんや白鸚さんら大御所がご健在のうちは難しいのではないのかな。

でも、何もしないでただ生きるのも、御本人のために良くないと思うのです。多分相当心を痛めている筈です。なので、しばらくは歌舞伎とは関係のないボランティア等で、世の中の役に立つことを行い、その後歌舞伎の裏方などで再起を図るのも悪くないでしょう。

私は少なくとも、刑期の明ける3年間は表舞台に立つべきではないと思っています。御本人には辛いかもしれないけど、それだけの事を起こしていますから。3年経った時に、ちゃんと更生している(反省している)様子ならば、裏方からスタートして、歌舞伎の世界に携わっていくのがいいのかな、と。

幸い、演出の才能がありますし、彼に才能を見出されて羽ばたいている役者が多くいます。その道でやっていくのもありなのかもしれません。

ただ、「舞台に立つ」猿之助さんを待っている人もすくなくありません。出来れば立たせてあげたい気持ちはありますが、それはまだ先の話。それに関しては、歌舞伎界や松竹の動向次第ですが、さすがにすぐにはないと思います。

今、歌舞伎の動員数が減っているようです。コロナ禍明けで、ほぼ規制がなくなっても、以前のように客足が戻らない、との事。特に歌舞伎座が顕著らしいですね。

猿之助さんだけではなく、坂東玉三郎さんも歌舞伎座から身を引く発言をしました(でも12月に天守物語に出るようですが)。このお二人は、これまで観客を集められた功労者と言っても過言ではありません。だからかなり痛手だと思われます。

今月の歌舞伎座の座組も苦労されているな、と言うのが良く分かります。寺島しのぶさんを座組に入れたり、本来は脇の役者である坂東彌十郎さんを主演に置いたりと、苦労しているのが目に見えます。

つまり、今の歌舞伎界には、観客を集められる役者がいない、と言う事。本当はもう1人いらっしゃいますが、松竹との折り合いが良くないようで、最近は自主公演に力を入れているっぽいですし。

松本幸四郎さんあたりだとまだいいのかな、と思っていますが、猿之助さんの事件の後、あまり舞台で拝見する機会が少ないのが気になります。あと、菊之助さんとかになるのか。

個人的には中村屋ファンなので、兄弟にもっと歌舞伎座に出てほしいな、と思っていますが、こちらも自主公演が多いですし。自主公演もいいけど、たまには他の役者さんたちとコラボした舞台を見たいです。

コロナ前までは、中村屋菊之助さんや幸四郎さんらとのコラボ公演があったのですが、最近はほとんどないですからね。これは中村屋だけではなく、他の役者さんたちもそうで、一門とか決まった顔触れでの公演が多くなった印象があります。

そんな中、平成生まれの若者たちの頑張りが唯一の救いです。本当に皆良く頑張っています。コロナ禍の中、限られた機会にそれぞれ切磋琢磨し合い、大きく成長しています。彼らが主になるのはまだまだ先のことですが、この先希望を持てるのはいい事だと思います。

そして、その世代の多くを大きくしたのが、猿之助さんなのです。あの事件後、中村隼人くんが「いつでも待っています」と仰ってましたが、彼だけではなく、猿之助さんによって成長した若い役者さんたち全てが、そう思っている筈です。下手をすると、舞台を途中で投げ出した猿之助さんを非難しかねない事態になってもおかしくないのに、そうならないのは、伸び悩んでいたり、出番に恵まれなかった時に、猿之助さんから声を掛けられて、今に繋がったご恩があるから、だと思います。

そういうのを知っているから、歌舞伎の世界から排除させるのは、さすがに酷だと思うのです。だから、影で若手たちを支えたりとか、励ましたりと言う役割などを与えてもいいのかと。

これからの事は、良く分かりません。でも、ほんの少しでも、猿之助さんにとって希望が見出だせる結果になって欲しいし、それまでは、真摯に反省して、罪を償って欲しいです。そしてそれまではそっとさせておいてあげて。

幸い、香川照之さん(市川中車さん)が身の回りのお世話とか、結構親身になっているようなので、その辺は安心しています。香川さんも、歌舞伎の事だけでも大変なのに。澤瀉屋の面々も、変わらず活躍されていますし、何とか一門で心を1つにして乗り越えて欲しいです。